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協議離婚とその協議書

離婚の流れ


協議離婚が最も多い理由

 日本における離婚の約90%は、協議離婚によって行われています。これは、他の離婚手続きに比べて費用や時間の負担が少ないことが主な理由とされています。この中には話し合いを行わず離婚届を提出するだけのものも含まれます。


話し合いの調整が必要な場合

 また、約9%は、家庭裁判所の調停委員(離婚に詳しい専門家)が間に入り、話し合いを調整していく調停離婚の手続きが行われています。 この方法は、一方が話し合いに応じない場合や、親権や金銭面で折り合いがつかない場合などに利用されます。
 調停で合意に至らなかった場合には、訴訟を提起し、最終的には裁判所の判決によって離婚が成立する判決離婚に進むことになります。


離婚の種類
  • 協議離婚:夫婦双方に離婚の意志があり夫婦合意による離婚。
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  • 調停離婚:離婚を希望しているが、話し合いがつかないとき家庭裁判所で調停による当事者間で話し合いができ、調停が成立した場合の離婚。
  • 審判離婚:調停が成立しない場合に、裁判所は調停にかわる審判をすることができる。
  • 判決離婚:民法770条で定める離婚。
    • 配偶者に不貞な行為があったとき。
    • 配偶者から悪意で遺棄されたとき。
    • 配偶者の生死が3年以上明らかでないとき。
    • 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。
    • その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。

離婚の4段階
段階 内容 結果
1 夫婦間での話し合い 協議離婚
※不調>>条件面で折り合わない場合、相手が交渉に応じない場合などは「調停」へ
2-1 家庭裁判所へ「調停」申し立て>>専門家が間に入って調停 調停離婚
※不調>>「訴訟へ」 (「訴訟」は「調停」を経ないと行えない)
2-2 審判離婚の提案>>裁判官が条件を提案してくる例外ケース 審判離婚
※不同意>>「訴訟」へ
3 家庭裁判所への「訴訟」提起判決離婚

手続きごとのメリット・デメリット
離婚の種類メリットデメリット
協議離婚・手続きが簡単で費用も少ない
・早く離婚できる
・当事者の合意で自由に内容を決められる
・一方が応じなければ成立しない
・細かい部分の漏れがトラブルにつながる
・公正証書化しなければ法的拘束力が発生しない
調停離婚・第三者(調停委員)を介して冷静に話し合える
・記録が残るため、後の証拠になる
・合意内容が調書に残れば法的拘束力あり
・手続きに時間がかかる(通常数ヶ月〜)
・相手が合意しなければ不成立になる
・申立書作成の負担がある
審判離婚・調停不成立でも、裁判所が職権で離婚を認める
・一定条件下で迅速な解決が可能
・相手が異議を申し立てれば効力がなくなる
・実施されるケースは非常にまれ
判決離婚・合意がなくても法的に離婚を実現できる
・法的に明確な形で決着がつく
・費用・時間・労力の負担が大きい
・証拠や離婚理由、目的の明確化が必須
・判決後も控訴などで長期化することがある

離婚時に話し合うべきこと

 離婚に際して話し合うべきことは、主に次の4点です。年金分割は、決まった手続きによって確定する権利ですが、慰謝料請求や財産分与、親権/養育費には、実効性を持たせるために細部についても合意を得ておく必要があります。

離婚時の合意事項
  • 慰謝料:不法行為による精神的苦痛に対して請求可能です。離婚時の相場は50万~300万円です(※相手に非がない場合は請求できません)。
  • 財産分与:これまで夫婦で共に築いた財産を基本的に半分ずつ分け合うものです(※相続等とは異なります)。
  • 年金分割:離婚時に夫婦が納めた厚生年金を分け合う制度で、最大で2分の1が分割割合となります。第3号被保険者は自動的に2分の1の分割が適用されます(※適用することで年金受給が不利になる場合もあります)。
  • 親権と養育費の決定:離婚届け提出には親権の決定が必要です。親権者は子の監護権と財産管理権を持ちます。また、親権者は子の年齢や相手の収入に応じた養育費を請求できます。

離婚協議書の作成に向けて
協議離婚の確認事項の一例
項目内容
離婚届の提出者どちらが提出するか決めておくことで、協議自体がスムーズに進むみます。
親権について子ひとりごとに決めます。
養育費について子ひとりごとに月額を定めます。どちらが、いつから、毎月何日に、どのような方法で支払うか、どういう時に(例:病気や失業など)支払いを逃れられるかを詳細に決めておきます。
面会交流子と会う頻度や方法、連絡の取り方の取り決めです。
慰謝料通常は一括払いですが、分割でも構いません。一括ならいつ(何年何月何日に)払うのか、分割なら毎月何日に幾ら払うのかを決め、振込の手数料負担と遅延利息について定めておきます。
財産分与動産(金銭や株式、自動車や家電製品等)、不動産(建物やマンション等)をリストにして、どちらの所有にするか取り決めておきます。
動産/不動産の引き渡し方法いつ名義を変更するのか、配送が必要な場合は送料は誰が負担するのかを決めておきます。
振込先口座慰謝料や養育費の支払先の口座(銀行名/口座番号/名義)を決めておき、協議書に記載しておきます。
氏・戸籍の変更姓を旧姓に戻すか、子の戸籍について。
情報変更時の連絡従者や職場に変更があった際の連絡について取り決めておきます。
年金分割について基礎年金番号とともに、厚生年金の按分比率を決めておきます。3号分割を受ける場合もその旨を記載しておきます。
負債金額と返済者住宅や車のローンについて、どちらが支払うか決めておきます。
裁判管轄未払いがあった際に解決の調停を依頼するのは、家庭裁判所です。離婚協議書を公正証書化した際に給与等の差し押さえ依頼するのは、地方裁判所です。
清算条項協議書で決めたこと以外の話は後から持ち出さない事を成約します。後から何らかの理由を持ち出して債務不履行の理由とするのを防止する効果があります。

離婚協議書の役割


離婚協議書作成の目的

 離婚協議書を作成する目的は、相互の私的約束を公正証書化して拘束力を持たせることですが、公正証書化しない場合でも、その後債務不履行となった際の、家庭裁判所への調停申し込み(離婚後)の証拠になります。
 また、財産や負債の状況を確認し、離婚後は手続きの負担が増しがちな年金分割や保険等の名義変更を進めるという役割もあります。


離婚協議書の基本的な様式

 離婚協議書は、下記の様に作成します(※参考例)。必要に応じて項目を増やしたり減らしたりしますが、協議時点であまりに未確定の事柄については、別途協議するとします。
養育費については、終期を子の年齢が18歳~22歳とするのが一般的です。
公正証書を作成しない場合は押印を入れておきます。

離婚協議書様式
番号 項目 協議書の記載例
離婚の合意 例:1条 甲と乙は、協議離婚により婚姻関係を解消することに合意する。
親権者と監護権者の定め 例:2条 長男(氏名)の親権者は乙、監護権者は乙とする。
子供の養育費 例:3条 甲は、乙に対し、毎月○万円の養育費を支払うものとする。
子供との面会交流 例:4条 乙は、甲に対し、月に○回、長男と面会交流を行う機会を与える。
離婚慰謝料 例:5条 乙は甲に対し、離婚慰謝料として○万円を支払う。
離婚による財産分与 例:6条 甲は乙に対し、以下の財産を財産分与として譲渡する:○○銀行の預金○万円。
住所変更等の通知義務 例:7条 甲乙は、住所変更があった場合、相手方に速やかに通知するものとする。
清算条項 例:8条 甲乙は、本契約書に基づくすべての清算が完了したことを確認する。
特別支出条項 例:9条 甲乙の所得の変動により養育費に金額に変更がある場合は、別途協議する。
強制執行認諾 例:10条 甲乙は、協議書に基づく義務不履行の場合、強制執行に応じることを認諾する。


離婚協議書作成の効果
  • 相手側が債務を履行しない場合、家庭裁判所への再調停申請の資料になる。
  • 相手側が債務を履行しない場合、地方裁判所民事執行センターでの手続きが開始できる。
  • 内容証明送付で債権請求の消滅時効(5年)を完成させないようにできる。
  • 親権を失った親が死亡等した場合、子が親に代わって養育費請求を行える。
  • 親権者側(養育費を受け取る側)が、同時に財産分与や慰謝料支払いの債務者(支払う側)になったような場合に、双方の請求権と支払い義務の状況を整理できる。
離婚協議書の日付

 離婚協議書は、離婚届を提出し離婚が成立した後から有効になるのが一般的です。
 ただし、慰謝料の支払いや財産の分割などは離婚前に行う場合もあります。そのようなときは、実行日を離婚協議書作成日または協議書締結後の日付にしておきます。


公正証書(離婚給付証書)の作成


強制執行承諾文言

 金銭の支払い義務について、支払いが滞った場合に直ちに強制執行を受けることができる旨を公正証書に記載すること(強制執行認諾文言)で、調停や審判を経ずに強制執行手続きを行えるようになります。
 強制執行認諾文言が記載されていない場合、強制執行はできません。


離婚公正証書作成の流れ

STEP1: 公証役場への連絡

 最初に手続きを行う公証役場(どこでも良い)を選び電話で予約をします。その際に大体の内容を決めておき、必要な書類を確認します。

 事前に質問を準備しておき、自動車の査定額や、ローンを支払い中の不動産の名義変更が行えそうかの確認をしておきます。

STEP2: 公証役場での面談(1回目)

 1回目は夫婦のどちらかの方だけで大丈夫です。

持ち物

  1. 夫婦双方の身分証明書(運転免許証、マイナンバーカード、パスポートなど)
    相手側の身分証明書についてはコピー可(※公証役場毎に要確認)
  2. 印鑑(認印で可)
  3. 戸籍謄本(3ヶ月以内のもの)
  4. 離婚協議内容のメモやドラフト(養育費・財産分与・慰謝料など)
  5. 関係資料(必要に応じ、不動産登記簿、ローンの明細や契約内容が分かる書類、車検証、口座明細など)

 面談後に2回目の日時(2~3週間後)が知らされます。相手側の日時を調整して訪問の予定を組みます。

STEP2: 公証役場での面談(2回目)


2回目は夫婦双方で行く必要があります。

持ち物

  1. 夫婦双方の身分証明書
    ※原本が必須。住所を移している場合は、住民票も必要。
  2. 印鑑(認印で可/公証人から指示があった場合は実印)
  3. 印鑑証明書(公証人から指示があった場合)
  4. 最終的な離婚協議内容
  5. 関係資料

 これらの資料を提出し、公正証書(離婚公正証書)の正本と謄本が発行されます。


財産分与と養育費


共有財産の考え方

 財産分与とは、婚姻期間中に夫婦が共同で築いた財産を離婚時に分け合う手続きです。
 名義が一方にあっても、婚姻中に得た財産であれば、原則として共有財産とみなされます。対象となる財産には、不動産、預貯金、有価証券、自動車、退職金(将来受け取る見込みのあるものも含む)などがあります。
 逆に、婚姻前に取得した財産や、相続・贈与によって得た財産は、特有財産という扱いになり、分与の対象外となります。


財産分与の対象
財産の種類 概要 分与の際の注意点
預貯金 婚姻期間中に貯めた普通預金・定期預金など 口座名義が一方でも、共有財産と見なされる。残高証明などで正確な額を確認。
不動産 住宅や土地などの不動産資産 評価額やローン残債の把握が必要。不動産評価は専門家の査定を利用することも。
自動車 夫婦で使用していた車両など ローンが残っている場合は名義と債務の確認が必要。
退職金 離婚時点で既に発生している退職金、または将来受給予定のもの 勤務年数のうち婚姻期間に相当する部分だけが対象。会社から見積額を取得。
保険(解約返戻金) 終身保険などの解約時に返戻金が発生する保険 現在の解約返戻金額を保険会社に確認し、対象額を把握。
有価証券 株式や投資信託など 時価の変動に注意。評価日を明確にして合意することが望ましい。

教育費の決め方

 養育費とは、子どもが自立するまでに必要な生活費や教育費を、非監護親が監護親に対して支払うものです。養育費の額は、家庭裁判所が提示する「養育費算定表」を参考に決めるのが一般的です。子どもの人数、年齢、そして夫婦双方の収入などが考慮されます。以下は簡易的な算定表の例です。


教育費算定例
夫の年収(万円) 妻の年収(万円) 子1人(0〜14歳)の養育費(月額)
500 200 4〜6万円
700 300 6〜8万円
1000 400 8〜10万円

金銭消費貸借契約書の作成

金銭消費貸借契約について


口約束のリスクと契約書の必要性

 金銭消費貸借契約書は、貸付金の額や利率、返済期限、返済方法といった基本的な条件だけでなく、実際の返済トラブルを想定した条項まで丁寧に盛り込む必要があります。
 特に中小企業同士の貸し借りや、親族・知人間の契約では、信頼関係に基づいて口約束で済ませてしまうケースも少なくありません。しかし、万が一の紛争を防ぐためにも、法的に有効な契約書の作成が欠かせません。
 契約書には、債務者が返済を怠った場合の対応、連帯保証人の有無、遅延損害金の有無とその利率など、実務で重要となるポイントを具体的に明記しておくと、後々の対応がスムーズになります。


合意内容の証明書としての役割

 契約書を作成する際は、当事者同士で合意した内容が後に争点とならないよう、客観的な証拠としての体裁を整えることが大切です。
  一般的な契約書の形式としては、契約当事者の氏名や住所、契約の目的、具体的な条件、履行期限、違反時の対応などを明確に記載します。そのうえで、署名または押印の欄を設け、契約の成立を示す必要があります。
 さらに、契約の成立日や作成日を明記し、課税対象となる契約の場合には所定の収入印紙を貼付します。これにより、契約書の真正性や証拠力が高まります。
 加えて、契約書が法的トラブル時に証拠として提出されるケースも想定し、原本の保管場所や控えの取り扱いについても事前に話し合っておくと安心です。


金銭消費貸借契約書の条項例
条項名内容の例
貸付金額○○円
利率年○%
返済期日令和○年○月○日
返済方法分割/一括/口座振込など
遅延損害金年○%
連帯保証人氏名・住所・捺印

契約書の表現における注意点

 契約書を作成する際は、使う言葉や表現にも十分な注意が求められます。たとえば、「返済に努める」や「可能な範囲で協力する」といった曖昧な表現では、後に解釈の違いからトラブルが生じるおそれがあります。
 「返済しなければならない」「○○する義務を負う」など、当事者の義務や責任が明確になる表現を使うことで、契約内容に法的な安定性が生まれます。


契約書作成時の法令確認

 2020年(令和2年)の民法改正により、個人が保証人となる場合には、「保証の極度額(上限金額)」を契約書に記載することが義務化されました。極度額を明記しない保証契約は無効と見なされる可能性があるため、特に中小企業や個人間での貸借契約では細心の注意を払う必要があります。
 契約書を作成する際、疑問点や不明点があれば、法令や判例を参照し、正確で適切な表現を盛り込むことで、将来的なトラブルを避けることができます。


債務不履行時の対応


債務不履行の対策

 債務不履行が発生した際に混乱を避けるためには、契約書にその対応策をあらかじめ明記しておくことが欠かせません。
 例えば、「返済期日を過ぎた場合は、期限の利益を喪失する」といった条項を設けることで、裁判を通さずに残債の全額を一括で請求できるようになります。
 このような条項が契約書に含まれていない場合、分割返済中の一部不履行に対して全額の請求が難しくなることもあるため、事前に対応方法を定めておくことが効果的です。


トラブル防止のための条項

 契約書では、債務不履行が起きた場合に備えて、具体的な対応を定める条項をあらかじめ設けるのが一般的です。
 なかでも実務上よく利用されているのが、「期限の利益喪失条項」「遅延損害金条項」「保証人責任条項」などです。これらは、債務者が返済義務を怠った際に、債権者が速やかに対応できるようにするための仕組みです。
 単に条項を記載するだけでなく、いつ適用されるか(発動条件)、遅延損害金の利率、通知が必要かどうかなど、詳細な取り決めを文面に反映させることで、実効性のある契約内容となります。


トラブルを防止する条項
条項名内容の例
期限の利益喪失1回でも支払いを怠った場合、残債全額を一括請求可能
遅延損害金年14.6%(法定上限以内)
保証人責任主債務者が履行しない場合は連帯保証人に請求

執行認諾文言

 契約書には、債務不履行が生じた場合の対応を見据え、通知手続きに関する条項を記載しておくと、万が一のトラブル時にもスムーズな対応が可能です。
 たとえば、「催告を要せずに一括請求できる」旨の特約を設けておけば、債務者に対して催告書を送ることなく、ただちに残額の一括請求をおこなうことができます。
 このような特約がない場合には、民法第541条に従い、原則として債務者に履行を求める催告の手続きを経る必要があります。
 さらに、通知の方法についても、あらかじめ明確にしておくことが実務上有効です。たとえば、通知手段として郵送や内容証明郵便を指定したり、通知から履行までの期限や猶予期間を設けたりすることで、誤解や争いを避けやすくなります。
 こうした契約書を備えておく事は、債権回収の実効性を高め、当事者間の信頼関係を維持するうえでも役立ちます。


催促・催告などの言葉の違い

 債務の弁済を求める際に、催促、督促、催告という言葉を使います。ニュアンス的にはどの言葉も意味は同じですが、厳密には異なる効果を有しています。


催促・督促・催告の違いと例
用語 意味 法的効果 主な使用場面 具体的な実行例
催促 行動を促す一般的な通知や呼びかけ なし(形式自由、法的拘束力なし) 日常会話、ビジネスの軽い催し メールで「請求書のご確認をお願いします」と送る
督促 支払いや履行を強く求める行為(請求行為) 原則なし(ただし一定手続きでは効果あり) 債権回収、公共料金の未納通知など 「督促状」を郵送して支払いを促す
催告 法律で定められた履行要求の意思表示 あり(催告後に契約解除や損害賠償が可能) 債務不履行対応、契約解除手続き 「〇日以内に支払いがない場合、契約を解除します」と内容証明で通知


公正証書の外部強制力


公正証書の外部強制力とは

 執行認諾文言が入っている公正証書は、裁判手続きを経ずに財産差押えなどの手段に移行できる点で極めて強力な法的効果を持ちます。特に金銭消費貸借契約においては、債務不履行が発生した際に貸主は速やかに強制執行の申立てを行うことが可能となります。


 執行認諾文とは、「本契約に基づき債務不履行があった場合、直ちに強制執行を受けることに同意する」といった趣旨の文言が必要です。これは任意であるため、借主の同意を得たうえで明記する必要があります。


 なお、一般的な私文書契約では、債務不履行があった場合、まず訴訟提起から始まり、判決確定後にようやく強制執行が可能となります。


私文書契約と公正証書契約の違い
契約形式債務不履行後の手続執行までの時間
私文書契約訴訟 → 判決 → 執行数ヶ月〜1年以上
公正証書契約即時執行申立て数週間程度


内容証明郵便による退職

退職時の内容証明郵便の書き方


内容証明郵便の効果

 会社に対して退職の意思を正式に伝える手段として、内容証明郵便を利用するケースがあります。
 この場合、書面には「退職の意思表示」と「退職日」のほか、「会社名」および「代表者名」、そして送付者である退職者本人の「氏名」と「住所」を明記します。
 さらに、「退職届の受理」や「私物の返還」といった、会社側に求める具体的な対応も記載しておくことで、後々のトラブルや誤解を防ぐ手段となります。
 退職を巡るやり取りにおいて証拠性を確保したい場合や、口頭での申し出が無視された場合には、内容証明郵便による通知が有効に機能します。


円満な退職の為の文面

 退職の意思表示は、退職日を明確にしつつ、事実を通知する文面にまとめます。感情的表現や攻撃的な文言は避けましょう。

「私こと、○○は、令和○年○月○日をもって貴社を退職いたします。本通知をもって退職の意思表示とさせていただきますので、所定の手続をお願いいたします。」


内容証明郵便作成時の注意点

 内容証明郵便は一字一句が証拠となるため、曖昧な表現や誤字脱字は厳禁です。また、日付や宛名、差出人情報が一致していないと無効になるリスクもあります。
 また、wordで作成した文章を、日本郵便の「e内容証明」で送ることも可能です。


記載項目ごとの注意点
項目注意点
退職日「通知日から2週間後以降」を基準に記載
宛名法人名+代表者の役職・氏名を正確に記載
差出人住所住民票上の住所を明記
現住所が住民票の住所と異なる場合は、現住所を記載し、補足として住民票住所を記載します。これは本人確認のため必要となります。

未払い給与請求と有給消化


内容証明による未払い給与の請求方法

  退職時に未払い給与が発生している場合、内容証明郵便は強力な請求手段になります。電話や口頭での催促では記録が残らず、労働者の主張が不利になる恐れがありますが、内容証明であれば「いつ」「誰に」「何を」請求したかが明確な証拠となり、法的手続きの足掛かりになります。


  退職時に未払い給与を請求する際は、金額やその内訳、対象となる勤務期間を具体的に記載することが大切です。たとえば「○月○日〜○月○日分の基本給」「残業代○時間分」など、詳細に明示することで、請求の根拠がはっきりと伝わります。
 あわせて、有給休暇の残日数や、その消化を希望する期間についても明記しておくと、会社側に対応の判断を促す内容になります。
 これらの項目を整理して記載することで、やり取りの齟齬を防ぎ、話し合いがスムーズに進みやすくなります。


未払い賃金の記載項目
  • 未払い給与の金額・期間・内訳
  • 有給残日数と希望消化日
  • 支払・対応期限

退職時の賃金支払い日

&emsp労働基準法第23条では、退職又は解雇の場合においては、使用者は、労働者の請求があった場合には、その請求の日から7日以内に、賃金その他の金銭を支払わなければならないとされています。
 一部の退職金等を別にすれば、所定支給日まで支払いを待つ必要はなく、内容証明到着日から7日以内の支払いを求める事も可能です。


請求賃金不明時の対処法
対応方法 具体的な内容
給与明細や雇用契約書を確認する 基本給や残業代の計算方法が記載されている可能性があるため、まずは雇用契約書・給与明細・就業規則を確認する。
概算で請求内容を示す 正確な金額が分からなくても、「〇月分として約〇円相当」などと概算を記載し、会社に事実確認を促す。
勤務記録やタイムカードをもとに整理する タイムカード、勤怠アプリの記録、出退勤メールなどをもとに、労働時間や残業時間を推定して請求の根拠とする。
会社に明細の開示を求める 給与明細やタイムカードなどの資料開示を会社に正式に求め、未払いの有無を確認する。

 内容証明を送っても会社が支払いや対応を行わない場合、次のステップとして「労働基準監督署への申告」や「労働審判・少額訴訟」などの法的手続きを検討することになります。内容証明郵便はこれらの初動としても非常に重要な役割を果たします。


トラブルを防ぐための対応


内容証明での退職通知の注意点

 退職の意思を伝える手段として内容証明郵便を利用することは、法的な証拠を残すうえで有効とされています。ただし、送付のタイミングや文面の内容によっては、「無断欠勤」や「業務放棄」と受け取られるおそれがあるため注意が必要です。
 とくに業務の引き継ぎについて触れていない場合、会社側が「業務に支障が生じた」として、損害賠償を主張するケースもあります。
 退職通知には、退職の意思や日付だけでなく、引き継ぎ対応への配慮や連絡体制についても一言添えておくと、トラブルの防止につながります。内容は冷静かつ具体的にまとめ、勤務先との関係に配慮した文章を心がけましょう。


一方的な退職通知が招くリスク

 たとえば、労働者が会社との十分なやり取りを経ずに、一方的に内容証明郵便で退職を通知した場合、無断欠勤とみなされて懲戒解雇に至るケースがあります。
 こうした状況では、退職に至るまでの経緯ややり取りの有無が紛争解決の場で重視され、労働者に不利な判断が下されることもあります。退職時の対応が誠実であったかどうかが、トラブル発生後の立場を左右することにつながります。


退職時に発生し得るリスク
リスク内容
損害賠償請求業務放棄や急な退職による損害を理由に請求される
退職金不支給社内規定により「懲戒類似」とみなされ支給されない
再就職への障害企業間での評判伝播や推薦状拒否

2週間前の解約予告

 内容証明郵便で送付される文書は、法律上の効力をもつ「退職通知」として扱われます。これは、民法(627条:2週間前の解約予告)に基づいて労働契約の終了を一方的に通告するもので、会社の承諾を前提としない法的な意思表示です。
 これに対して、「退職届」や「退職願」は主に社内手続きの一環として提出される文書であり、形式的には会社の了承を得ることが前提とされています。
 つまり、「退職通知」と「退職届・退職願」は性質も効力も異なります。内容証明郵便で送る場合は「退職通知」となる点に留意して下さい。


個人・小規模取引の契約書

契約書に記載する主要事項


契約書の種類と使い分け

 契約書は、双方の権利と義務を明確に示す重要な文書です。曖昧な表現を避けるためには、具体的な記載が必要です。例えば、「いつまでに何を行うのか」といった期日の明確化や、商品やサービスの内容の特定、支払条件、遅延や不履行時のペナルティ、免責事項などは、誤解を招かないよう具体的かつ分かりやすく記載することが求められます。契約における双方の理解を一致させるためにも、あいまいな表現は避けるようにしましょう。
 また、契約書にはいくつかのパターンがあり、取引の内容や目的に応じて適切に使い分けをします。


契約書の種類
契約書の種類 主な特徴 作成が必要なケース
売買契約書 ・商品や物品の「売買」に関する条件を定める契約書。
・価格、数量、納品時期、所有権移転のタイミング、支払い条件などを明記。
・瑕疵(欠陥)や返品・クレーム対応についても記載するのが一般的。
・商品や材料を仕入れる場合
・継続的に物品の販売を行う取引を開始する場合
・高額な商品や設備などを売買する場合
請負契約書 ・成果物の「完成」を目的とする契約(例:Webサイト制作、建築工事など)
・成果物の納品と引き換えに報酬を支払う形が基本
・納期、完成基準、責任範囲(修正対応など)を明確に記載
・ホームページや動画、システムなどを外部に制作依頼する場合
・建築、修繕、製品の製作など「モノや成果物」が必要な業務
・納品物のクオリティや納期を契約でしっかり担保したい場合
秘密保持契約書(NDA) ・業務上知り得た機密情報を第三者に漏らさないようにするための契約
・対象となる情報の範囲、保持期間、違反時の責任などを明記
・契約締結前に交わすのが理想(事前NDA)
・新商品・サービスの開発に関する話し合いを行う場合
・業務委託や共同開発などで、社内情報を共有する必要がある場合
・ベンチャー企業がアイデアを外部に持ち込む場合

製品製造の契約書の注意点

 製品を提供する事業では、納期や支払いの時期の取り決めを明記していない場合、大量キャンセルや未払いに繋がることがあります。


製造業者の契約書記載項目
項目記載内容例
請求タイミング納品後翌月初に請求書発行
支払期限請求書発行月の末日
手数料負担振込手数料は甲の負担
遅延利息年率14.6%で算出
キャンセル期限納品前日までに書面で通知
注文単位最小ロット〇〇個
納品場所指定倉庫または工場
納期注文後30日以内
品質基準JIS規格に準拠

契約書の構成

 契約書は、前文(契約の背景や当事者、契約目的を記載)、本文(具体的な契約条件、権利義務、ペナルティー事項などを詳細に記載)、後文(契約の発効日、署名・捺印など)の3つのパートで構成されています。
 これらの部分は、それぞれの役割を持ちながら契約書の内容を構成しており、契約を結ぶ際の基本的な枠組みを提供します。


契約書の記載例
構成要素 概要・内容 記載例
タイトル 契約の種類や目的を端的に示す。 例:「業務委託契約書」「秘密保持契約書」
前文 契約当事者の名称、所在地、代表者名などを記載し、契約の趣旨や背景を簡潔に説明する。 例:
「○○株式会社(以下「甲」という)と、△△合同会社(以下「乙」という)は、以下のとおり業務委託契約(以下「本契約」という)を締結する。」
本文 契約の具体的な条項(契約内容、期間、報酬、秘密保持、解除条件など)を条文形式で記載。 例:「第1条(業務内容)」「第5条(報酬及び支払方法)」など
後文 契約の成立や写しの作成、その他の補足事項を記載。 例:
「本契約の証として、本書2通を作成し、各自署名押印の上、各1通を保有する。」
契約締結日 契約が効力を発する日付を記載。 例:「令和○年○月○日」
署名/記名と捺印 当事者が契約内容に合意したことを示すため、署名または記名押印を行う欄。 例:
甲:○○株式会社 代表取締役 山田 太郎 ㊞
乙:△△合同会社 代表社員 佐藤 花子 ㊞

 個人向けのサービスを提供する事業者が契約書を作成する際には、専門用語に偏らず、誰でも理解できる表現を使うことが求められます。
 特に、料金体系や支払い方法、キャンセルポリシーなど、トラブルに直結しやすい項目は、別紙や図解などの補助資料を活用して、契約相手がしっかり理解できるよう工夫します。たとえば、「前日17時以降のキャンセルは全額負担」「初回契約時に一括払い」など、具体的かつ明確な表現が後の誤解を防ぎます。
 契約書のレイアウトはシンプルで、余白や改行を適切に使い、文字サイズや書体も読みやすいものに整えると、顧客との信頼関係にもつながります。法律用語や専門用語は、一般の人に伝わる言葉に言い換えることで、契約内容への納得度が高まりやすくなります。


契約不履行時には


契約不履行とは

 契約不履行とは、金銭の未払いだけでなく、契約で合意された義務、たとえば納品、支払い、作業の履行などが一方的に果たされない状態も含みます。
 こうした事態を未然に防ぐには、契約書の段階でトラブル発生時の対応方法やペナルティの有無など、具体的なルールを取り決めておくことが大切です。契約内容が明確であれば、問題が起きた際の対応もスムーズに進みます。


支払拒否・納期遅延などの典型例

 よくある事例として、業務委託契約に基づいて製品を納品したにもかかわらず、発注元が「品質に満足できない」として代金の支払いを拒むケースがあります。
 一方で、事業者側が納期を守れずに発注元に損害を与えるケースも見られます。このようなトラブルでは、どちらの主張に正当性があるかは契約書の内容によって判断されます。納期や品質基準、検収方法などが文書で明記されていれば、解決の糸口になりやすくなります。


内容証明と法的手段の前に

 万が一契約不履行が起きた場合、まずは内容証明郵便によって相手に意思表示を行う方法があります。その後、必要に応じて証拠を整理し、調停や少額訴訟などの法的手段に進むことも可能です。
 ただし、損害賠償額の算定や過失割合を巡って話が複雑になることも多く、必ずしも短期で解決するとは限りません。そのため、相手方と契約に基づいた履行内容を確認しながら、まずは冷静に交渉するという選択肢も、現実的かつ有効なアプローチと言えます。


債務不履行時の交渉の進め方
STEP 1

事実関係と証拠を整理する

契約書や発注書、納品物の写真、メールなどを揃え、問題点を明確にします。主観ではなく、様々な角度から客観的に見て過失の内容を確認します。

STEP 1

感情的にならず契約内容を伝える

再度、契約内容を伝えることで説得力が増します。相手の立場も一定程度理解しつつ、問題解決の意思がある姿勢を伝えましょう。初期対応は結果に影響します。

STEP 2

解決策を複数提示する
「返品・再納品」「一部返金」「次回値引き」など、複数の着地点を提案することで、合意に至りやすくなります。

STEP 3

合意内容は書面で残す
交渉の経緯を文書に残しておくことで、同じ問題が蒸し返されるのを防ぐことができます。また、合意内容を明文化することで、トラブルの再発防止にもつながります。

STEP 4

第三者機関の活用を検討する
それでも、解決の糸口が見えない場合は、商工会議所や法テラス、中小企業庁の「下請かけこみ寺」などに相談し、専門家の助言を得ましょう。


継続契約と個別契約の違い


継続契約と個別契約

 取引が一度きりで終わらず、今後も定期的に発生する見込みがある場合は、「継続契約」と「個別契約」のどちらを選ぶかが大きな判断材料になります。
 継続契約は、基本契約書などで取引の共通ルールを事前に定め、同じ相手と何度も取引する際に適用される契約形態です。これに対し、個別契約は、都度発生する取引ごとに条件を設定し、その都度契約書を交わす形式です。



継続契約の特徴

 継続契約を締結することで、毎回契約内容を確認・締結する手間が省け、業務の効率化につながります。
 たとえば、製造業における定期的な部品供給や、月額制のクラウドサービスなど、反復的な取引が想定される業種においては特に有効です。また、取引条件が安定していれば、コストの予測が立てやすく、取引先との信頼関係も築きやすくなります。


個別契約のメリット

 一方で個別契約は、価格や納期、仕様などを案件ごとに細かく調整できる柔軟さが特徴です。
 スポット的な業務委託や、案件単位で条件が大きく異なる取引に適しており、それぞれの契約内容を明確に書面で残すことで、認識のずれによるトラブルを未然に防ぐことができます。


契約管理の工夫

 継続契約は便利な一方で、契約内容が実態と乖離してしまうと、思わぬトラブルの火種になることがあります。定期的に内容を見直し、必要に応じて改訂することで、契約の有効性を保つことができます。
 また、個別契約においては、口頭やメールのやり取りだけに頼らず、必ず書面で合意内容を明文化しておくことで、万が一の紛争時にも対応しやすくなります。
 とくに小規模事業者やフリーランスの場合は、限られたリソースの中で契約リスクを最小限に抑えるためにも、取引スタイルに応じた契約形態を使い分け、契約書の運用方法にも一定のルールを設けておくことが取引の安定性を高める一助となります。


電子契約について


電子契約導入ノメリット

 電子契約は、従来の紙の契約書に代わり、契約の締結や保管をすべて電子データで行う仕組みです。
 署名は電子署名や電子認証を通じて行われ、日本国内では電子署名法などの関連法により、紙の契約書と同様の法的効力が認められています。
 書類の印刷や郵送、保管にかかる手間やコストを削減できることから、個人事業主や小規模事業者にとっては業務効率化と経費削減の両面で大きな利点があります。


電子契約の導入手順

 電子契約の導入にあたっては、まず電子化の対象となる契約書類を選定します。
 見積書や業務委託契約書、発注書など、紙でのやり取りが頻繁な文書から電子化を始めるのが一般的です。
 次に、複数の電子契約サービスを比較し、業務規模や利用目的、予算に合ったサービスを選定します。


スマートフォンで完結する契約

 電子契約書を活用すれば、ショートメッセージサービス(SMS)を通じて契約書のURLを送信し、顧客がスマートフォンからそのままアクセス・同意する形式の契約も可能になります。
 対面や郵送が不要なため、スピーディーかつシンプルな契約手続きが実現でき、店舗営業や訪問販売、会員登録など、迅速な対応が求められるシーンで特に有効です。


顧客の利便性の向上

 実際の手順としては、まずオンライン上で契約書の内容を作成し、PDFやテンプレート形式で電子契約サービスにアップロードします。
 その後、契約相手の携帯電話番号をシステムに登録し、SMSで専用の契約URLを送信。顧客は届いたメッセージを開き、リンクをクリックするだけで契約書の内容を確認できます。
 内容に問題がなければ、そのまま画面上で電子署名を入力またはクリックし、契約が締結されます。スマートフォン一つで完結するこの方法は、ITツールに不慣れなユーザーでも直感的に利用できる点が特徴です。


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